マザー症候群
何と言ったのか。
ゲスな女は何が言いたいのだろうか。
口の動きは、
「波斗、助けて」
と、言っているようだ。
「助けないよ」
「赤の他人だからね」
美波が道瑠の口の動きを見て、突然毅然と呟いた。
「ねえ、波瑠」
テレビのそばで戯れる波瑠を、美波が両腕で思い切り高く抱き上げた。
「くっくっくっく」
波瑠が笑っていい顔をした。
「よしよしよし。いい子だ。いい子だよ」
美波がくったくなく笑う波瑠の顔をまじまじと見詰めた。
その顔は、最良の嫁 井本ちゃんと瓜二つだった。
了
この物語はフィクションです。