マザー症候群

 波斗は到着口に出た時、まず探したのは母親の美波だった。次に恋人の道瑠。
 母親の美波が迎えに来てくれる事は、予めメールで知らされていた。
 仕事を抜け出して迎えに来るらしい。広告代理店の制作部長がどれだけ忙しいか。その状況で抜け出すのはどれだけ大変か。
 美波のメールには、恩着せがましい事がつらつらと。
 ところが。
 最初に波斗の目の中に飛び込んで来たのが、母親でなく道瑠。背が高く、奇抜なファションのせいだろう。
 道瑠が大きく手を広げた。
 思わず、波斗はその手の中に吸い寄せられた。凄い吸引力で。
 (あんなにお袋の事を探していたのに。それが気が付けば道瑠の腕の中。これって、現実?それとも夢の中?)
 波斗は道瑠の腕の中で、当惑しながらとろけていく自分を感じていた。

 
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