マザー症候群

 美波は恐る恐る二人のそばへ。一歩。また、一歩。
 その時、陶酔した女の口元にチラッと赤いものが動いた。
 一瞬。それも、ほんの一瞬。確かに見えた。口のあたりで。ちろちろ。ちろちろと。赤くうごめくものが。
 (何?)
 (まさか)
 (嘘?)
 (破廉恥な)
 (こんな人前で。恥知らずが)
 (ゲスな女ね)
 (こんな女に。絶対・・・)
 美波は、女を睨み付けながら心に固く固く誓った。

 
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