マザー症候群

 ホテルからすぐそばの地下鉄心斎橋駅へ。
 地下鉄に乗ると、美波はドアにもたれ車窓から外を眺めた。
 暗闇の中に時折ライトの灯りが走っては消えてゆく。
 窓にぼんやり映る自分に向かって、美波が無音で話し掛けた。
 (本当に言ったの)
 (嘘でしょう)
 (それも、あの瞬間に)
  (嫌ねえ)
 (何故?) 
 (なぜなのよ)
 その答えは、美波自身にもわからなかった。

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