マザー症候群
「ただいま参上」
そこには、冗談が挨拶代わりのイモトチャンタが。
「あら、早いわね」
と、美波が驚いた顔で。
「今日は大事な大事な日。気合が入ってしまって」
井本は、手にいっぱいの荷物を持っている。
「さあ、早く入って。
美波、井本を台所へ。
「鯵の南蛮漬けとケーキを持ってきました。先輩、味見お願いします」
井本がタッパーウエアに入った南蛮漬けとケーキをテーブルの上に置いた。
「ありがとう。助かるわ。昨日から作ってくれたのね。材料代は後で払うから」
「わかりました。え~と、味の方はどうですか」
「ちょっと待ってね。今、味見ををするから」
美波がタッパーウエアから鯵を一匹取り出した。そして、それを箸でつまんで口に入れると。
「いい味出てるわ。かなり私の味に近い」
「嬉しい。レシピに忠実にしましたから」
井本は、美波に褒められ嬉しそう。
美波、心の中で。
(この味なら、波斗も間違うかも)
(私の計算通り。これなら大穴も有りね)