マザー症候群
美波がにんまりと微笑んだ。
「先輩、私は何を」
井本が何を手伝えば良いのか、美波の指示を仰いだ。
「南蛮漬けとケーキは出来ているから。そうね。私がばら寿司と茶碗蒸しを担当するから。井本ちゃんは鯛の煮付けとう巻きをお願いね」
「わかりました。これって波斗さんのお好きな料理なんですか」
レシピを探しながら、井本が美波に質問を。
「ええ、そうよ。波斗は魚料理に目がないの。さしづめ波斗好物懐石ってとこかな」
「そうなんだ。彼女は魚料理は大丈夫なんですか」
「ああ、あの女?無視ね。それも完全無視」
美波が忌々しそうな表情で。
「大怖~」
「怖いでしょう。母親を敵に廻すとどうなるか。思い知らせてやるの。井本ちゃんの前では仏だけど。あの女の前では夜叉よ。それも鬼夜叉よ」
「怖~い」
「そうよ。こんなよ」
美波が、両一指し指で頭に角を作ると妖怪顔を作った。そして、二人は顔を見合わせて大声で笑い合った。
それから二人は料理に専念。料理がほぼ出来上がった頃に。