マザー症候群
美波、3人の会話を聞いていて頭にカチンときた。
(何て礼儀知らずな女なの)
(二人が会話中なのに、割り込み)
(許せない)
静かに見守っていた美波が、ここで口を開いた。
「ねえねえ波斗、料理食べてる?」
「ああ、食べてるよ」
耳慣れた母親の声に波斗が即反応した。
返事待ちの道瑠は渋い顔。
「鯵の南蛮漬けはどうだった?」
「おいしかったよ。さすがお袋」
波斗は南蛮漬けを作ったのが美波だと思っているようだ。
「鯛の煮付けは?」
「最高。こんな煮付けはハワイでは絶対に食べられないよ」
「う巻きは?」
「絶品。お袋のう巻きは卵が違うんだよね」
波斗が料理を絶賛した。