マザー症候群
「待てよ」
慌てて波斗が追い掛けた。
道瑠は急いで玄関を出ると、足の向くままにただ走りたかった。ただただ、あの場から逃げ出したかった。余りにも自分が惨めで情けなかったから。
(いい嫁になりたい。その為には、お義母さんとうまくやりたい。ただ、その事だけを願っているのに。物事が逆回りする。お義母さんはなぜうちを毛嫌いするのか。なぜ?ナゼ?何故?)
走るうちに思いが込み上げてきて、道瑠は涙をぽろぽろと流した。
「はあはあはあ・・・。道瑠、俺はお前の味方だから」
波斗が道瑠に追い付き腕を捕まえた。
「ごめん。お袋のこと。俺はお袋とは違うからな」
「ありがとう。ううう・・・」
道瑠が波斗の腕の中で泣きじゃくった。
「うううっ・・・。波斗。波斗!めっちゃ、好きやで。波斗は?」
「俺も」
「大大大好きやで。波斗は?」
「俺かて」
「うちとお義母さん。どちらの方が好き?」
波斗の顔を見上げながら、道瑠が意地悪な質問をした。
「う~ん。どちらも」
「嫌い!波斗なんか大嫌い」
道瑠が両拳で波斗の胸をぽんぽんと叩いた。