マザー症候群
美波、箱からケーキを取り出すと。
「手作りのチョコレートケーキか。外観はまあまあね。さて、お味は?」
美波がケーキをひと口口に入れて目を丸くした。
「やべえ。この味何?」
「おいしいですか」
「井本ちゃんも早く食べてみて」
「わあ。凄い。チョコレートが違う。きっとヨーロッパの一流チョコレートを使っているんだわ」
井本も余りのおいしさに目を丸くした。
「言い過ぎたかな」
と、ちょぴり反省の美波。
「ケーキの食べ比べしなくて良かった。私完敗よ」
井本も敗北を潔く認めて。
「彼女、なんだかかわいそう」
「井本ちゃん、駄目よ。敵に情けは禁物よ。花嫁の座は一つしかないのよ。その座を必ず奪ってね」
「あっ、そうでした。そうでした。よ~し、頑張るぞ」
美波と井本は、後片付けを終えると、焼酎の湯割りを飲みながら、今後の作戦を練るのでした。
二人は顔を見合わせて。
ごっくん。
うめえ!
たまら~ん。
二人の酒宴はつづく、でした。