マザー症候群


 美波は心通が入るビルの前にタクシーを止めた。
 「頭に来るわね。絶対に渡さないから。絶対よ。覚えてらっしゃい」

 会社に戻るころには、美波の怒りの感情は少し冷却されていた。
 (あの怒りの感情は何だったんだろう)
 (波斗のせい。いや、そうじゃない)
 (じゃ、誰のせい)
 (あの女よ)
 (あのゲスな女のせいよ)
 美波は、怒りの感情の正体をはっきりと実感していた。



 
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