マザー症候群
游は自宅に戻ると、半同棲状態の凛を問い詰めた。
「凛、お前部長に会ったのか」
「ああ」
と、平静を装う凛。
「何しに行ったんだ」
「あいつ、游に垂れ込んだのか。どこまで言いやがったんだ」
「馬鹿な事をしやがって。あの女は得意先の部長だし、親ほど年が離れた母親みたいな存在じゃないか」
「まじで」
「ああ、まじもまじ。あんな婆あ、幾ら何でも。得意先だから仕方なく付き合っているんだ」
游は、弁解の為に腹にも無い事をしゃしゃと喋った。
「じゃ、待ち受け画面にどうしてあいつの写真を使うんだ」
「あれは、モデルとしていけるか、どうかを試したんだ」
「モデル?」
「ああ、個展のモデルに。年増の女はどうかなと思ったんだけど。でも、全く、駄目。野暮天も野暮天。酷過ぎる。で、失格に」
そう言うと、游はスマホの待ち受け画面を凛に見せた。そこには、美波とすり替えた凛の写真が。