マザー症候群

 酒は、ワイン、日本酒、ビール、ウイスキー、焼酎。
 酒の肴もずずずいと揃い踏み。
 美波はハイピッチで焼酎湯割りを飲んでいた。
 「先輩、ピッチが早過ぎますよ。もう少しゆっくりと行きましょう」
 と、心配そうな井本。
 「大丈夫。大丈夫。ういっ、もう一杯。井本ちゃん、作ってくれる」
 「仕方ないなあ。飲みたい気持ちはわかりますけど」
 井本は薄目の焼酎湯割りを美波に渡した。
 「いつもお袋が何かとお世話を掛けて。本当にどうもすみません」
 波斗、井本に向かって頭を大きく下げた。
 「いえいえ。お世話になっているのはこちらの方です。波斗さんはいつ家を出られるのですか」
 「来月、頭を考えています」
 と、波斗。
 「なら、もう何日もありませんね」
 「そうよ。波斗は私をひとり残して出て行くのよ。冷血人間よ。好き勝手に出て行くが良い。薄情者よ。バイバ~イ」
 美波が波斗をうつろな目で見ながら辛辣な言葉を投げ掛けた。もう大分出来上がっているみたいだ。

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