【短編】隣の君に恋する瞬間
「1本しか持ってないの?」
「えっ……!?」
やっぱり私に話しかけていた矢野くんは、なんとまぁ鋭くこちらを睨みつけていて。
いや、物を借りる人の目じゃないでしょうよ…。
やっぱり苦手だな。
「ううん。持ってるよ。…はい」
早くその目から逃れたくて慌ててペンケースからシャープペンをとって矢野くんに差し出した。
1席分空いている私と矢野くんの距離。
少しだけ手を伸ばすと、矢野くんもおんなじように手を伸ばしてきて、私のシャープペンを受け取った。
「ありがと」
…?!
ちゃんと…お礼言うんだ。
なんて、彼のセリフに少しだけ驚いて。