【短編】隣の君に恋する瞬間
クマのシャープペン
席替えから1週間が経ってから。
少しだけ、矢野くんのことがわかってきた。
目つきが悪いけど、思ってたよりよく笑う。
目つきが悪いけど、思ってたよりよく冗談を言う。
目つきが悪いけど、思ってたより字が綺麗。
そして…。
「相原、シャー芯無くなった」
そういって、こちらに手を伸ばす彼のもう片方の手にはクマのシャープペンが握られていて。
「あ、うん」
私はそういって、シャー芯の入ったケースを矢野くんに渡した。
あの日から、あのクマのシャープペンは矢野くん専用のシャープペンになっている。
一度、黒板を消してる私に「借りるぞー」と席から声を掛けてきた矢野くんは、私が頷くとペンケースからそのシャープペンをとった。