【短編】先輩を独り占めしたくて。


「そ、そんな色気たっぷりに呼べないです……!」

「……馬鹿なの?」


精一杯そう言ったあたしに、先輩が呆れたように声を上げた。


「呼び捨てがいいなって話なんだけど」

「あ、そっち」


あたしは、はい、と頷きかけて、色気たっぷりに呼ぶことの次に、それは出来ないことだと気づく。


「……それって、そんなに大切なことですか?」

「そりゃもちろん。雪姫だって、俺に三吉(みよし)さんって呼ばれたくないでしょ?」

「う………」


当たり前だ。

あたしだって、入部したての頃は、先輩に『三吉さん』って呼ばれてて、好きになったときに、『そんな呼び方嫌だ』って猛烈に思って……あ。


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