【短】熟年愛
うかつにも涙が出てきた。


「ばかみたい、私。」


ここ5年間の誕生日を思い出して――。


その前までの、2度の誕生日は


ちゃんと当日にお祝いをしてくれていた。


やっぱり、年月は人の気持ちを薄めてしまうのか。


彼の事ばかり言ってられない、自分の気持ちの変化にも腹が立つ。


もう、終わりにした方がいいのだろうか。



でも……


それを考えると、寂しく思う自分もいる。


単純に、自分の本音がわからないんだ。



枕に顔をうずめ、小刻みに肩を震わせていると――



―――ピンポーン



玄関のチャイムが鳴った。



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