言わなきゃわからない?
「栄さん。あたし、4月から研修担当になるんです」




***





年度末のバタバタが今日やっと終わった。
解放感を味わいたい。
部屋で一人で飲むなんてめったにしないけど、ビールでも買って帰ろうか。

エレベーターを待っていると、後ろから名前を呼ばれた。


「相田さん」

「お疲れさまです」


今年度に入って仕事で組む機会が増えた、営業の栄さん。
あたしは、さきほどようやく終わった今年度の営業成績を伝える。


「ようやく数字が出ました」

「どうだった」

「おめでとうございます。栄さんのチームがトップでした。」

「いやいや。サポートのおかげですから」


パチパチと拍手をすると栄さんは一応、謙遜してみせた。
エレベーターに並んで乗り込み、1階のボタンを押す。


「今度打ち上げしましょう」

「あぁ、そうだな」


トップチームには報奨金が出たはず。
あたしはそれを期待して栄さんに言った。
エレベーターが1階につき、ドアが開く。
駅に向かって歩き始めたところで栄さんに止められた。


「まっすぐ帰るの」

「はい。ビール買って帰ります」

「軽く打ち上げしない?」

「ぜひっ」


あたしは満面の笑みで答えた。
栄さんはそれを見て笑った。
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