言わなきゃわからない？

「相田さん、休みとったのいつ？」

「え…っ」


あの休日出勤から２週間。
あたしは振替休日をとれず。
さらに。
チームのほうも忙しく。
休みなしで２週間が過ぎていた。

今日は栄さんに同行している。
無事に契約を取った帰りの車のなか。
栄さんに指摘を受けていた。


「休めよ、ちゃんと」

「すみません。いま忙しくて」

「忙しいのはみんな同じ」


そう言いながら栄さんがハンドルを切った。
あれ。
会社とはちがう方向。


「相田さんが休んだくらいで回らなくなるような仕事の仕方してるわけじゃないだろ」

「…そうですね」


栄さんの言ってることはもっともだ。
あたし一人が休んだくらいで、どうにかなるようなことなんてない。


「…でも。休むのこわいんです。置いていかれそうで」

「そんな心配いらないだろ」


栄さんが路肩に寄せて車を止めた。
川沿いの堤防。
エンジンを切ってシートベルトを外す。


「仕事出来て信用出来るから相田さんに任せたんだ」


栄さんが車から降りた。
あたしもそのあとに続く。
梅雨の晴れ間。


「契約取れたから、寄り道」

「栄さん、契約取れないことあるんですか」

「あるよ」

「うそー。契約取ってるとこしか見たことないです」

「オレ、相田さんいるとき勝率１０割」


そう言って栄さんはタバコに火をつける。
気持ちよさそうに煙をはいた。