あなたの空に向かって I Love You
 彼女はツアーには参加せず、一人で登る。と言った。

 もちろん、俺も一人で登る。

 夜明け前の登山道は、大渋滞。九合目辺りから山頂まで人の波が続く。半端な人数ではない。過去の経験からわかる。

 一回目の富士登山は、家族三人で登った。俺と親父とおふくろの三人で。その時のルートは、富士宮ルート。八合目の山小屋に泊まった。俺は高山病になってしまった。親父とおふくろに付き添われて、なんとか登頂できた。

 二回目の富士登山は、弾丸登山だった。男友達二人と一緒に登った。その時のルートは、須走ルート。家に帰るまで一睡もしなかった。

 あれから三年、体力はさほど落ちていない。弾丸登山できる自信はある。



 渋滞を避けるためには、深夜二時頃までに山頂に到達しなければならない。

 それに、山頂から満天の星空を眺めるためには、夜中のうちに登頂する必要がある。

 山小屋に泊まる彼女は、十三時に五合目を出発。

 弾丸登山の俺は、十七時に五合目を出発。

 メールで連絡を取り合いながら登って、山頂の本宮浅間大社の前で落ち合う。

 お互いに写真は交換している。会えばわかると思う。



 二人で満天の星空を眺めながら、山頂で夜を明かし、雲海から昇るご来光を眺める。

 雲海とご来光をバックに、二人で写メを撮る。自撮り棒は、俺が持っていく。

 下山は、二人で一緒に。

 五合目にあるお土産屋さんに寄って、富士宮のレストランで食事をする。

 そして、二人で電車に乗って帰る。
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