あなたの空に向かって I Love You
 日本の治安はまだいいほう。まだ多くの人が理性を保っている。

 猛烈な暑さだけど、外を出歩くことができる。

 最低限のインフラは確保されていて、水も電気もガスも供給されている。

 人間は生きるだけで精一杯。働いているのは、人工頭脳を搭載したロボット。

 そのおかげで、喉を潤すことができる。シャワーを浴びることもできる。テレビを見ることもできる。エアコンを使うこともできる。携帯も繋がる。



 食料の配給は、二日に一回。配給車のトラックの前には、いつも長蛇の列ができる。小さな女の子まで並んでいる。どの子もお腹を空かしている。

 奪い合いが起こらないように、銃を持ったロボットが見張っている。

 なんともいえない緊張感が張り詰める中、私も配給の食料をもらいにいく。

 昨日の配給は、塩むすびが三つ。大人も子供も三つ。私の分、息子の分、娘の分、合わせて、九つ。

 息子は、十三歳。娘は、十一歳。二人とも食べ盛り。私は一つのおむすびを二日に分けて食べる。水をたくさん飲んで、お腹を満たす。

 お肉とお魚は久しく口にしていない。果物は滅多に食べられない。野菜はたまに食べられる。

 じゃがいも、さつまいも、玉ねぎ、ねぎ、人参、大根。国内で生産されている野菜だけ。

 輸入は完全にストップ。どの国も自国のことで精一杯。食料を輸出できる余裕のある国なんてない。

 お米生産工場も、野菜生産工場も、厳重な警備がなされている。建物に侵入しようとすると、人工頭脳を搭載したロボットから威嚇射撃を受けてしまう。
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