あなたの空に向かって I Love You
第6話 酒浸りの男
 今夜も、グラスを二つ用意した。

 よく冷えた日本酒を、二つのグラスに注ぎ込む。

 いつものように、波々と注いでやった。

 少し零れてしまったが、グラスを拭く必要はない。

 べとついたテーブルを拭く必要もない。

 酒のつまみも必要ない。

 目の前に置いたグラスに、俺のグラスをカチンと合わせる。

 乾杯

 俺はグラス一杯の日本酒を一気に飲み干す。

 荒れた喉を潤して、五臓六腑に染み渡り、空きっ腹が悲鳴をあげる。

 コンビニで買ってきた安酒。紙パック入りの安酒。いつもの安酒。2リットルで、950円。

 味はイマイチだが、酔えればいい。

 俺は目の前のグラスをじっと睨みつける。

 波々に注がれたまま。



 なんだ、ぜんぜん減っていないじゃないか。

 今夜も飲まないのか。

 頼むから、飲んでくれよ。

 と言ったところで、無駄なのはわかっている。
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