あなたの空に向かって I Love You
 毎晩毎晩、遅くまで一人で酒を飲み、目の前のグラスに語り掛ける。

 いつも酔い潰れて寝てしまう。リビングの床で目を覚ます。

 会社には行っているが、家のことは何もしない。掃除も洗濯も料理も何も。

 するといえば、買い物だけ。会社帰りに、コンビニに寄って、紙パック入りの安酒を買う。

 休日は、どこにも行かず、昼間から酒を煽る。

 ゴルフもすっかり行かなくなってしまった。

 酒に溺れた父親。

 こんな俺に愛想をつかしたのか。昨日、一人娘が家を出た。

 二十三歳の一人娘。もう立派な大人だ。一人でも、生きていけるだろう。

 娘には、彼氏がいるらしい。どんな男なのかは知らない。

 お前の血を受け継いだ娘だ。きっと、しっかりしている男だろう。

 結婚して、幸せな家庭を築いてくれればいい。

 そうなれば、俺の肩の荷は降りる。お前の肩の荷も降りるだろう。
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