あなたの空に向かって I Love You
 紙パックがだいぶ軽くなってきたぞ。

 手で持った感じでは、残り500ミリリットルくらいだ。

 お前が飲まないから、いつも俺ばかりが飲んでしまう。

 明日も仕事だが、もう少し飲ませてくれ。

 いいな。いいよな。



 お前と俺の結婚記念日は、いつだったか覚えているか?

 なんだ、覚えていないのか。

 十月三日だ。教会で挙げたじゃないか。


 新婚旅行の行き先は、どこだったか覚えているか?

 なんだ、覚えていないのか。

 オーストラリアに行ったじゃないか。エアーズロックに登ったじゃないか。

 お前がパスポートを無くして、二人であちこち探し回ったじゃないか。

 ホテルのレストランに置き忘れていて、フロントに届けられていたじゃないか。


 二人でよくゴルフに行ったな。

 俺がホールインワンした時のことを覚えているか?

 なんだ、覚えていないのか。

 お前は、まぐれだと言ったな。奇跡だとも言ったな。

 まぐれでも奇跡でもない。俺の実力だ。

 今はもうすっかり腕は落ちてしまったが。



 毎晩、同じ話ばかりで、すまんな。

 あの頃の俺は輝いていたか?

 相変わらず、お前は何も言わんな。
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