あなたの空に向かって I Love You
 四時十分、荒川登山口を出発。

 足元に気をつけながら、トロッコ道を歩く。

 はあ、はあ、はあ、はあ、はあ。

 まだ数分しか歩いていないのに、早くも息が切れてきた。肺が苦しい。

 

 五時二十二分、小杉谷小学校跡に到着。

 ここで朝ご飯。石の階段に座って、おむすびを頬張る。

 寒さで手が悴む。

 水を飲んで、出発。



 平坦なトロッコ道を歩き続けているうちに、夜が明けてきた。

 冷たい霧雨が降り続いている。

 雨に濡れた森。大きな屋久杉たち。生命の息吹を感じる。

 とても美しい森だけど、景色を楽しむ余裕はない。写真を撮る余裕もない。

 歩くだけで精一杯。

 後ろから来た人たちが、次々に私を追い抜いていく。



 はあ、はあ。はあ、はあ。はあ、はあ。

 あなた、そこに座って、少し休憩します。



 はあ、はあ。はあ、はあ。はあ、はあ。

 あなた、そこに座って、少し休憩します。



 はあ、はあ。はあ、はあ。はあ、はあ。

 あなた、そこに座って、少し休憩します。



「こんにちは」

「こんにちは」

「顔色が悪いようですが、大丈夫ですか」

「はい。大丈夫です」

 まだ道半ば。ここで倒れるわけにはいかない。
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