あなたの空に向かって I Love You
 一時四十七分、富士山頂に到着。

 水をひと口飲み、本宮浅間大社に向かった。

 微笑んでいる彼女の写メを見つめながら待った。



 二時五分。

 二時十分。

 二時十五分。

 二時二十分。

 二時二十五分。

 二時半。

 

 彼女は姿を現さない。

 二人で眺めるはずだった満天の星空。

 綺麗は綺麗だが、やっぱり、二人で見たかった。






 一人で満天の星空を眺めているうちに、夜が明けてきた。

 オレンジ色に染まった雲海から、ご来光が昇り始める。

 この瞬間を待ちわびた大勢の登山客から歓声があがる。

 次々とカメラのシャッター音が鳴り響く。

 

 俺はリュックから自撮り棒を取り出した。

 自撮り棒にスマホをセットして、眩しいご来光に背を向けた。

 いいか。撮るぞ。

 何枚か連写で撮影した。

 

 里美……

 来てくれてたんだな。

 気づかなくて、ごめん。

 二人で一緒にご来光を眺めよう。



 来年も、富士山に登る。

 再来年も、富士山に登る。

 登れなくなるまで、年に一度、富士山に登る。

 俺は、まばゆい光を放つご来光に誓った。
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