言えよ、俺が欲しいって。


「もうすぐ、花火始まるな」



……花火は、七瀬くんと見たかったんだけどな。


そう思うけど、隣に七瀬くんはいない。



「ん」



すると、相川くんがあたしに携帯を渡してきた。



「七瀬にかけろよ。花火は、七瀬と見るんだろ」



相川くんは、そう言って持っていたわたあめを代わりに持ってくれる。

どうしてこの人は、こんなに優しいんだろ?

最初は、そんなこと思わなかったんだけどなあ。



七瀬くんに何度も電話をかけたけれど、結局1回も出てくれなかった。


ため息をついて、携帯をしまう。



「じゃあ、このまま見ようぜ」



相川くんのお言葉に甘えて、花火が打ち上げられるのを待つ。

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