言えよ、俺が欲しいって。
「だからさ、とりあえず俺と付き合ってみる気ねえ?」
普通に。顔色なんか赤くもならず青くもならず、ただ普通に。真顔。
……またか!
「そんな冗談に乗るほど、あたしはバカじゃないんで!」
あたしは、“今度こそ帰ります”と言って相川くんにペコリ頭を下げて扉を開けた。
廊下を歩いていると、後ろからパタパタと足音が聞こえて咄嗟に振り向く。
「普通、俺を置いてくかよ」
相川くんは、スクバをリュックみたいに担いで地味に息切れしている。
「走ってきたんだ!?」
少し驚いたあたしの顔を見て相川くんはそっぽを向く。
いや、なんで?