言えよ、俺が欲しいって。
「七瀬くんが好きすぎて、クラクラしちゃう」
「そんなこと言ってる暇あるなら、さっさと行きなよ」
七瀬くんはそう言って、あたしを軽く睨む。
そんな睨み方じゃ、あたしはめげないよ。
むしろ、もっと大好きになったから。
「ありがとう、七瀬くん!」
「いいから早く行って、早く返して」
棘ばっかりだけど、優しさもあるんだよね。
あたしは、もう1度七瀬くんにお礼を言って走り出した。
化学の授業……間に合うか分からないけど。
あたしは、七瀬くんの教科書をギュッと抱きしめた。