言えよ、俺が欲しいって。
「そーゆーとこ、本当嫌い」
七瀬くんはそれだけ言うと、イライラしたような顔であたしを置いてUターン。
お、終わった……!
七瀬くんと帰れてハッピーだったのに…!
自分から雰囲気悪くしちゃって。しかも、七瀬くん帰っちゃったし。
「な、七瀬くん!バイバイ!」
この前は、七瀬くんからしてくれた“じゃあね”の合図も今はもう…あたしからしても、振り返してはくれなくて。
寂しい右手は、居場所がないまま。
あ、れ。振り返してもくれないんだ。
見向きも、してくれないんだ。
さっきまで。ついさっきまで。凄く楽しかったのに。笑って七瀬くんの隣で会話してたのに。
「……七瀬くん!じゃあね!」
あたしはもう一度大きな声で七瀬くんを呼んでブンブンと大袈裟に右手を振る。