言えよ、俺が欲しいって。
周りにはたくさん人がいて。
周りから見たらきっとあたし達は、カップルに見えてるんだろうな。
そんなこと思いつつ、少し申し訳なくなった。
あたし、相川くんの彼女でもないし、相川くんのことを好きでもない。
そんな人が、相川の隣にいていいのか?
そして、もし相川くんファンにこんな所を見つかったらどうする?フルボッコ?
だんだん人通りが多くなるにつれて、ドキドキしてくる。
高校生が通る度に嫌な心臓の音。
だってあたし…七瀬くんが好きだし…。
何故かわからないけれど、心の中で必死の言い訳。
あたしって本当最低だと思う。
七瀬くんのことが、好きとか言っておきながら。
こうやって、相川くんと手を繋いでるんだもん。
もしあたしが七瀬くんの立場だったら、何アイツ?ってなるよこれは。
今後、七瀬くんにそう思われてもしょうがないってことだよね。
「モモ?聞いてんの?」
「えっ、あっ…なに?」
全然相川くんの話聞いてなかった。
ガン無視してた。ごめん、相川くん。
今度からは気をつけるよ。
自分の世界に入らないように…!
「映画見る?」
「見たい!」
丁度いい!あたし、見たい映画あったんだよね〜!
そこで、ハッとする。
何乗せられてんだ、あたし!
隣の相川くん、ニヤニヤしてんじゃん!
ダメダメ…見たくても我慢しなきゃ。
相川くんはデートだって思わなくていいなんて言ったけど。
やっぱり、無理だよ。
チラチラ七瀬くんの顔が思い浮かぶ。
あたしだったら、告白された相手がこんなことしてると傷つく。
…やっぱり、帰ろう。
帰って、二度とこんなことはしないと肝に銘じよう…。