言えよ、俺が欲しいって。
気づかれないよう、どこにいるか分からない相川くんに警戒しながら歩く。
……だがしかし。
「何してんだよ」
後ろから聞こえる聞きたくない声にビクッと肩が跳ね上がる。
後ろを振り向けない。嫌だ。見たくない。
「コソコソしすぎ。そんなに俺と会いたくない?」
相川くんは、一向に振り向かないあたしの前に立った。
…わぁぁぁぁ!!相川くん!!
やだ!
あたしはバッと両手で顔を隠す。
「はぁ?」
「近づかないで!」
「幾ら何でも、こんなとこでキスなんかしねーよ」
「そっそのワードを出すな!」
キスなんて…朝から何言ってんのこの人!しかもここ、公共の場!廊下!公共の福祉に反しすぎ!!
「キスした仲じゃん」
「…」
何言ってんの、この人。
キスした仲?あなたが勝手にしてきたくせに。何考えてるの。
あいにく、両手で顔を隠してるから相川くんの表情は全くわからない。
でもきっと、昨日のことなんてなんとも思ってないんだよ、この人は。
あたしがどんな気持ちだったかなんて。
やっぱりチャラ男だ。
結局、誰でもいいんだ。
わかってたはずなのに、また悲しくなる。
あたしって、そんなレベルの女の子なんだねって。