祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―
第一章
悪魔のような国王陛下と魔女と疑われし娘
ソレが王の元に送られてきたのは、様々な思惑と策略、そしてほんの少しの当てつけだった。運命と一言で片づけるにはあまりにも陳腐で、それなのに、ほかの言葉を必死になって探しても、見つけることができない。
ならば、やはりこれは運命だったのか。それがいいことなのか、悪いことなのかは、このときはまだ誰にも分らない。
「陛下、いい加減ご自覚ください!」
必死さが込められている臣下の声を受け、王は軍備予定を記した書類から、鬱陶しそうにそちらに顔を向けた。
「クルト、そう大きな声で言わなくても聞こえている」
「ならば、後宮へ少しは足をお運びください。それも貴方の責務です」
予想通りの言葉が続けられ、王はその整った顔を歪めた。あからさまに不快そうにして立ち上がると、その瞳の色を模した紺碧のジュストコールが揺れる。
袖と裾のところに施された銀の刺繍は見事なものだが、それでも国王という立場を鑑みれば、いささか地味すぎる。しかし余計なものがない分、王の相貌の美しさは際立っていた。
コンティネント大陸の北西に位置する独立王政国家、シュヴァルツ王国。その頂点に君臨する若き王は、いつしか悪魔のようだ、と謳われるようになっていた。褒めているのか、貶しているのか。少なくとも王にとってはどちらでもよい。
流れるような黒髪に、青みがかった深い黒をたたえた瞳は、見る者を凍てつかすような冷厳さがあった。聡明さが滲みでる外見に対し、彼には愛想の欠片も存在しない。
しかし、直接王と関わることのない民にとってはそれは大きな問題ではなかった。
ならば、やはりこれは運命だったのか。それがいいことなのか、悪いことなのかは、このときはまだ誰にも分らない。
「陛下、いい加減ご自覚ください!」
必死さが込められている臣下の声を受け、王は軍備予定を記した書類から、鬱陶しそうにそちらに顔を向けた。
「クルト、そう大きな声で言わなくても聞こえている」
「ならば、後宮へ少しは足をお運びください。それも貴方の責務です」
予想通りの言葉が続けられ、王はその整った顔を歪めた。あからさまに不快そうにして立ち上がると、その瞳の色を模した紺碧のジュストコールが揺れる。
袖と裾のところに施された銀の刺繍は見事なものだが、それでも国王という立場を鑑みれば、いささか地味すぎる。しかし余計なものがない分、王の相貌の美しさは際立っていた。
コンティネント大陸の北西に位置する独立王政国家、シュヴァルツ王国。その頂点に君臨する若き王は、いつしか悪魔のようだ、と謳われるようになっていた。褒めているのか、貶しているのか。少なくとも王にとってはどちらでもよい。
流れるような黒髪に、青みがかった深い黒をたたえた瞳は、見る者を凍てつかすような冷厳さがあった。聡明さが滲みでる外見に対し、彼には愛想の欠片も存在しない。
しかし、直接王と関わることのない民にとってはそれは大きな問題ではなかった。
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