祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―
『この魔女め!』
またこの夢だ。リラはここに来るまでに自分を襲った悪夢を何度も繰り返し見ていた。
『その目は悪魔と契約を交わしている証拠だ!』
『目が合うと呪われるぞ』
痛い。自分が魔女なら、今、目に映っているお前たちは悪魔に憑りつかれている。たくさんの目がリラに向けられ、畏怖を宿したその眼差したちから自分は逃げることができない。そのうちの誰かがリラに触れようとした。
やめて!
その手を払い除けようと無我夢中で抵抗する。耳をつんざくような悲鳴が反響して、そこで目が覚めた。動悸が激しく、これが夢だということに気づくのに幾らか要したが、実感した途端、心底安心する。そこで、視界にある人物の影が映った。
「随分、魘されていると思えば」
認識する前に、その声で誰だか分かる。程よく低く、冷たさを孕んでいるのに、耳に心地のいいこの声の持ち主をリラは他に知らない。
先ほどと同じシチュエーションでベッドの傍らに立ち、自分を見下ろしているのはヴィルヘルム王だ。左手で右手の甲を擦りながら、相変わらずその表情は読めない。
リラはとっさに身を起こすと、後ずさりをして王から距離をとった。夢のおかげもあって、煩く鳴り止まない心臓を落ち着かせようと、自分で自分を抱きしめる。
寝汗を掻き、乱れている呼吸を整えるために、息を吐こうとするも上手くいかない。部屋はいくつかの蝋燭が灯され、それが鏡に反射し薄暗くも明るさを保っていた。
またこの夢だ。リラはここに来るまでに自分を襲った悪夢を何度も繰り返し見ていた。
『その目は悪魔と契約を交わしている証拠だ!』
『目が合うと呪われるぞ』
痛い。自分が魔女なら、今、目に映っているお前たちは悪魔に憑りつかれている。たくさんの目がリラに向けられ、畏怖を宿したその眼差したちから自分は逃げることができない。そのうちの誰かがリラに触れようとした。
やめて!
その手を払い除けようと無我夢中で抵抗する。耳をつんざくような悲鳴が反響して、そこで目が覚めた。動悸が激しく、これが夢だということに気づくのに幾らか要したが、実感した途端、心底安心する。そこで、視界にある人物の影が映った。
「随分、魘されていると思えば」
認識する前に、その声で誰だか分かる。程よく低く、冷たさを孕んでいるのに、耳に心地のいいこの声の持ち主をリラは他に知らない。
先ほどと同じシチュエーションでベッドの傍らに立ち、自分を見下ろしているのはヴィルヘルム王だ。左手で右手の甲を擦りながら、相変わらずその表情は読めない。
リラはとっさに身を起こすと、後ずさりをして王から距離をとった。夢のおかげもあって、煩く鳴り止まない心臓を落ち着かせようと、自分で自分を抱きしめる。
寝汗を掻き、乱れている呼吸を整えるために、息を吐こうとするも上手くいかない。部屋はいくつかの蝋燭が灯され、それが鏡に反射し薄暗くも明るさを保っていた。