祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―
太陽を雲が隠し、部屋の中は一気に暗くなった。静寂と共に夜がやってくる。リラは部屋の隅で成り行きを静かに見守った。
この前は悪魔を祓う言葉を唱えたその口で、今は悪魔を呼び出す呪文を口にする。ヴィルヘルムの声はそんなに大きくないのに、凛として、空気を震わせた。
「――深い眠りから覚めよ、霊たちよ。ここに汝らの王がもつ力によって、汝らの王たちのもつ六六六の王冠と鎖によって、我が唱えし、地獄の霊はすべて、この魔法の輪の前にその姿を現せなければならぬ。この力の及ぶ限り、汝はわれに従うことを命ずる。我が呼びし者の名は、ドゥムハイト」
地鳴りにも似た轟音が部屋に響く。この部屋が耐えられるのかという爆発にも似た衝撃に、リラは反射的に体を丸めた。そのとき、タイミングよく、部屋の扉が開く。
「ヴィル、まさかっ」
案の定、一番に飛び込んできたのはクルトだ。それに続きオスカー、メラニー、ブルーノ、ユアン、そしてエルマーが顔を覗かせる。しかし、部屋の光景を前に、驚愕、恐怖、絶望、各々浮かべている表情は様々だった。
「これは……」
なんとか声を出したのはブルーノだった。彼らの目に映し出されているものは、およそこの世のものとも思えないおぞましい姿をしていた。
全身、真っ黒な毛深い生き物は、頭は鳥のように長い嘴を持ち、鋭い眼光を放っている。ただ、胴体は翼はなく人間のように手があり、下半身は獣のようだった。
『我ヲ呼ビ出シ者、何用ダ?』
口が動くわけでも、喋っている様子もないのに声が直接、脳内に響いてくる。その声は唸り声のように耳につく。
この前は悪魔を祓う言葉を唱えたその口で、今は悪魔を呼び出す呪文を口にする。ヴィルヘルムの声はそんなに大きくないのに、凛として、空気を震わせた。
「――深い眠りから覚めよ、霊たちよ。ここに汝らの王がもつ力によって、汝らの王たちのもつ六六六の王冠と鎖によって、我が唱えし、地獄の霊はすべて、この魔法の輪の前にその姿を現せなければならぬ。この力の及ぶ限り、汝はわれに従うことを命ずる。我が呼びし者の名は、ドゥムハイト」
地鳴りにも似た轟音が部屋に響く。この部屋が耐えられるのかという爆発にも似た衝撃に、リラは反射的に体を丸めた。そのとき、タイミングよく、部屋の扉が開く。
「ヴィル、まさかっ」
案の定、一番に飛び込んできたのはクルトだ。それに続きオスカー、メラニー、ブルーノ、ユアン、そしてエルマーが顔を覗かせる。しかし、部屋の光景を前に、驚愕、恐怖、絶望、各々浮かべている表情は様々だった。
「これは……」
なんとか声を出したのはブルーノだった。彼らの目に映し出されているものは、およそこの世のものとも思えないおぞましい姿をしていた。
全身、真っ黒な毛深い生き物は、頭は鳥のように長い嘴を持ち、鋭い眼光を放っている。ただ、胴体は翼はなく人間のように手があり、下半身は獣のようだった。
『我ヲ呼ビ出シ者、何用ダ?』
口が動くわけでも、喋っている様子もないのに声が直接、脳内に響いてくる。その声は唸り声のように耳につく。