祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―
「分からない、私は、私はどうするべきなんだ?」

「メラニーの話を聞いてあげてください」

 リラの言葉に、オスカーは顔を上げた。

「頭から否定せずに、メラニーの話を聞いてあげてください。信じられないことでも、メラニーにとっては本当のことなんです。きっと、それだけで救われることがいっぱいあるんです」
 
 リラの言葉を受けて、ヴィルヘルムが続けた。

「多かれ少なかれ、我々には捉えられないものを、子どもが見えることはよくある話だ。メラニーはそれが少し強かった。ただ、たいていの場合、その力は成長と共に徐々に消えていく」

 オスカーは改めて、目の前の魔神をじっと見つめた。そして、しばらくしてからメラニーに目線を移す。不安そうに自分を見ているメラニーを見て、オスカーはメラニーとこんなに近くで目を合わせることさえ、いつぶりだったのだろうかと胸が痛んだ。

 自分はなにも間違っていない。おかしくなったのは友人とその娘だと決めつけていた。メラニーには悪魔が憑いていて、必死で父親の本を読む姿が恐ろしかった。

 本をどうにかしようとすれば部屋が荒れ、自分には見えないものの存在を訴えてくるメラニーが怖かった。その問題を祓魔師に頼めばすべて解決すると。本当はこうしてメラニーを向き合うことをしなくてはならなかったのに。

 オスカーはメラニーの頭をそっと撫でた。

「今まで、疑ってばかりでごめんよ。メラニーの言うことは正しかったんだね」
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