祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―
 窓から見える光景は随分と寂しくなってしまった。葉を落としていく木々が少しずつ色を失っていくのを見るのはなんとも寂しい。

 リラの育った村では雪が降るのが当たり前だったので、あまり雪の降ることのない王都での光景は、それはそれで珍しかった。

「っと、大体シュヴァルツ王国の大まかな歴史の流れはこんな感じです。リラさま、聞いてます?」

「あ、はい」

 改めてフィーネに指摘され、リラは慌てて意識をそちらに向けた。日中、リラはこうしてフィーネから国内外の情勢や内情、国の歴史、基本的な作法などを教えられていた。

 まさに専属の家庭教師だった。けれども、どうせ時間を持て余してる身だ。自分は一応、この国の出身者なのにあまりにも知らないことが多すぎて驚いた。

 閉鎖的な村だということもあったが、フィーネの説明によると、リラの住んでいた村のあるゲビルゲ山脈がシュヴァルツ王国のものになったのは、比較的新しい話らしい。

 そんな話を真面目に聞いてはいるものの、たまには退屈になって外に意識を飛ばしてしまうこともある。急いで謝ろうとしたが、フィーネは同じように窓の外に視線を投げていた。

「あ、ほら。さっき説明したばかりのフェリックス王の薔薇園です。彼は王として即位する前は、あの薔薇園でほとんどの時間を過ごしていたそうですよ。
 あまり公務に興味もなく色々と先行きを不安がられていたそうですが、王として即位してからは、人が変わったように民のために尽くされたそうで、父親のヨハネス王と共に、その名は今でも受け継がれております。生涯独身だったのが、勿体ないところではありましたが」
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