祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―
「術者に呪いを返すことだ。おかげで娘は呪いをこうむり、永久追放となった。そこで処刑しなかったのは、当時の王の甘さか、昔の伝承を意識したのかは知らないが。……だが、話はそこで終わらなかった」
そこでヴィルヘルムは自分の肌に刻まれた黒い薔薇を見つめる。
「呪いが強すぎて、すべては返せなかったようだ。代々、王になる者の体にこの薔薇は突然現れ、面白いことに決まって三年で命を落とすことになる」
なんでもないように放たれた真実をリラはどう受け止めていいのか分からない。頭をなにかで殴られたような、激しい痛みが走る。自分のことではないのに、心臓が鳴りやまずに息が苦しい。
「私にこの薔薇が現れたのは、ちょうど即位して一年経つか経たないかの頃だ」
尋ねてもいいことなのかと、迷っているリラの心を読んだかのようにヴィルヘルムはさらっと自分の残りの寿命について告げた。
今は即位して三年になると聞いている。そのことを考えれば、あと一年で……。
勝手に計算してしまう頭をリラは振り払う。いきなり告げられた真実が、まさかこんな残酷なものだったなんて。
当事者であるヴィルヘルムの前で泣くわけにはいかず、リラはぐっと力を込めて涙を堪えた。ゆっくりとヴィルヘルムの手がリラの頭に触れる。
「そんな顔をするな。私はとっくに自分の運命を受け入れている。代々そうだった。自分の父親も、祖父も。幸か不幸か、王家はいつも綱渡り状態で続いている。ただ……」
そこでヴィルヘルムは言葉を切った。珍しく悩んでいるのが伝わってくる。リラはただ続きをじっと待った。そして、ややあってから、なにかを吐き出すかのようにヴィルヘルムは口を開いた。
そこでヴィルヘルムは自分の肌に刻まれた黒い薔薇を見つめる。
「呪いが強すぎて、すべては返せなかったようだ。代々、王になる者の体にこの薔薇は突然現れ、面白いことに決まって三年で命を落とすことになる」
なんでもないように放たれた真実をリラはどう受け止めていいのか分からない。頭をなにかで殴られたような、激しい痛みが走る。自分のことではないのに、心臓が鳴りやまずに息が苦しい。
「私にこの薔薇が現れたのは、ちょうど即位して一年経つか経たないかの頃だ」
尋ねてもいいことなのかと、迷っているリラの心を読んだかのようにヴィルヘルムはさらっと自分の残りの寿命について告げた。
今は即位して三年になると聞いている。そのことを考えれば、あと一年で……。
勝手に計算してしまう頭をリラは振り払う。いきなり告げられた真実が、まさかこんな残酷なものだったなんて。
当事者であるヴィルヘルムの前で泣くわけにはいかず、リラはぐっと力を込めて涙を堪えた。ゆっくりとヴィルヘルムの手がリラの頭に触れる。
「そんな顔をするな。私はとっくに自分の運命を受け入れている。代々そうだった。自分の父親も、祖父も。幸か不幸か、王家はいつも綱渡り状態で続いている。ただ……」
そこでヴィルヘルムは言葉を切った。珍しく悩んでいるのが伝わってくる。リラはただ続きをじっと待った。そして、ややあってから、なにかを吐き出すかのようにヴィルヘルムは口を開いた。