祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―
 急いで憑いているものを見ようとすると、目が合った瞬間、気づけば自分の前に女の顔があり、すごい形相で睨まれている。

 とにかく息が苦しくて、首筋に痛みが走る。目を開けているのも辛くなって、意識が飛びそうだ。

「リラ!」

 ヴィルヘルムが十字を切ろうとした瞬間、ドリスは体勢を変えて、後ろから右腕を曲げてリラの体を拘束すると同時に首を挟んだ。髪を覆っていた布がはらりと落ちて銀の髪が流れ落ちる。

 それを見せつけるようにドリスはヴィルヘルムの方に向いた。その顔は、実に愉快そうだ。再び枯れた声がドリスの口から流れ出す。

「勝手なことを……。だが、いい。この女が大事なら、余計なことをするな。今すぐにでもこの首をへし折ってやる」

 ヴィルヘルムは躊躇った。脅しではなく、奴らがそういうことをするのを厭わないのをよく知っている。まさかの展開にクルトとエルマーの顔にも緊張が走る。

「お前の言う通り、この女とは契約不履行だ。それなら、こいつでいい。見事な銀髪じゃないか」

 いやらしく笑うとドリスはリラに顔を寄せた。リラの顔は息も絶え絶えに真っ青だ。その表情を楽しむかのようにリラを眺め、唇を重ねようとする。

 抵抗なんてできるはずもない。一瞬の隙をついてヴィルヘルムが前に出て、祓魔の呪文を紡ごうとする。
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