祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―
「紫の目、紫の目だと知っていたなら……。陛下、悪いことは言いません。やはり情けをかけるべきではなかった。今度こそ、この首を刎ねるべきだ!」

「どうしたんです? ノルデン方伯、どうか落ち着いてください」

 エルマーが間に入り、必死にノルデン方伯を宥める。リラはそんな光景を目の当たりにして、心臓が壊れそうに強く打ちつけながらも、妙な既視感を抱いていた。

 どうして自分がこんなにも責められているのか、疎まれているのか。分からない、けれど知っている。なぜなら、自分は――

「我がノルデン家に伝えられしもの。紫の瞳を持つものを決して王に、王家に近づけてはならぬ。それは王家の破滅を呼び、災いをなす。すべての呪いの元凶なのです」

「なにを……」

「その通りです」

 きっぱりとした声が別のところから響く。それは後から部屋に入ってきたクルトのものだった。その表情はいつもにも増して厳しくて険しい。大股で一同のところに近づき、仰々しくヴィルヘルムに膝をついた。

「陛下。突然のことで混乱しているでしょうが、彼女の素性をようやく調べあげることができました。彼女は、我が王家に仇をなすズーデン家の血を引く者です」

 突然の報せにヴィルヘルムもエルマーも、そしてリラも目を見開いた。クルトは立ち上がると、ヴィルヘルムを背に庇うようにして、リラを冷たく見下ろす。
< 174 / 239 >

この作品をシェア

pagetop