祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―
「あなたが住んでいた村は、かつて未開の地でズーデン家が追放された場所だと調べ上げました。そして、その銀の髪、紫の瞳。
珍しいとは思っていましたが、ノルデン方伯やヴェステン方伯に話を聞いて、ようやく分かったんです。ノルデン家に伝わる紫の瞳を持つものを決して王家に近づけてはならない、という話。それは、王に呪いを返されたズーデン家の血を引く者の証だと」

 そこでクルトは一息ついた。他の面々は、まだ告げられた真実を受け止められていない。

「なぜ王に、王家に近づいたんです? 祖先の復讐ですか?」

「違います、私は、そんなっ」

 敵を前にした冷酷な瞳を向けられ、必死に否定しようにも、言葉が続かない。自分でも信じられない、嘘だとしか思えない。けれど

「とにかく、彼女は危険です。処分については、のちに方伯たちを緊急招集して決定しましょう。ヴィルヘルム陛下は絶対に近づかないでください」

「待て、クルト」

 リラの方に近づこうとするヴィルヘルムをクルトが強引に止める。そこでヴィルヘルムとリラと視線が交わった。ヴィルヘルムの姿を紫色の瞳が映す。

『ごめんなさい、リラ。あなたにこの宿命を背負わせてしまうなんて』

 なんで今、どうしてこんなことを。忘れていた祖母の言葉がこのタイミングで鮮明に蘇る。

『だからお願い、どうか約束して――』

 そうだ、自分はなにを約束したのか。その続きはなんだったのか、それは

『王家には、王には決して近づかないって』

 なにかを拒絶するような叫び声をあげて、リラの意識はそこで途絶えた。
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