祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―
どうして忘れてしまっていたのか。出会った時から、この紫の瞳に王を映した時から、ずっと自分の中でなにかが引っかかっていたのに。惹かれる気持ちを懸命に押し殺そうとするなにかが、ずっと警鐘を鳴らしていたのに。
目を開けると、辺りは真っ暗だった。冷たさと硬さに身震いする。ここは自分に宛がわれた部屋でもない。視界に広がるのは暗闇で、一本の蝋燭だけが唯一の灯りだった。
ぽとっとどこかで水滴が落ちる音が響く。しばらく目を凝らして見ていると、徐々に輪郭を掴んできた。ここは地下牢だ。
床も壁もすべてが石造りの剥き出し状態で、恐ろしく冷たい。身は自由であるものの、鉄格子が目の前にあるので、どうすることもできない。完全な罪人扱いだった。
「本当に、私は、ズーデン家の末裔なの?」
誰に問いかけるわけでもなくリラは無気力に呟く。突然、明かされた自分のルーツをまだ受け入れられない。
この王家にやってきたのはまったくの偶然だ。偶然の、はずだ。それにしても、まさかこの瞳もこの髪の色も呪いのせいだったなんて……。
そこでリラの頭が切り替わる。王家にかけられたという呪い。その花が咲けば三年で命を散らすという黒い薔薇。
もしもあれが、自分と血を分けた者がかけた呪いなのだとしたら、どうにか解くことはできないのか。そんな力は自分にはないのか。
分からない。なにもできない。このままどうなってしまうのかさえも――。
目を開けると、辺りは真っ暗だった。冷たさと硬さに身震いする。ここは自分に宛がわれた部屋でもない。視界に広がるのは暗闇で、一本の蝋燭だけが唯一の灯りだった。
ぽとっとどこかで水滴が落ちる音が響く。しばらく目を凝らして見ていると、徐々に輪郭を掴んできた。ここは地下牢だ。
床も壁もすべてが石造りの剥き出し状態で、恐ろしく冷たい。身は自由であるものの、鉄格子が目の前にあるので、どうすることもできない。完全な罪人扱いだった。
「本当に、私は、ズーデン家の末裔なの?」
誰に問いかけるわけでもなくリラは無気力に呟く。突然、明かされた自分のルーツをまだ受け入れられない。
この王家にやってきたのはまったくの偶然だ。偶然の、はずだ。それにしても、まさかこの瞳もこの髪の色も呪いのせいだったなんて……。
そこでリラの頭が切り替わる。王家にかけられたという呪い。その花が咲けば三年で命を散らすという黒い薔薇。
もしもあれが、自分と血を分けた者がかけた呪いなのだとしたら、どうにか解くことはできないのか。そんな力は自分にはないのか。
分からない。なにもできない。このままどうなってしまうのかさえも――。