祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―
「これは、これは」
誰もいないと思っていたところから声が響き、リラは叫びそうになった。声は牢の外ではなく中だ。
恐る恐る辺りを見渡せば、ひとりの若い男が立っている。いつからそこにいたのか、リラはまったく気がつかなかった。
背が高く、肩まである黒い髪に透けるような白い肌。ヴィルヘルムとは、また違った妖艶な美しさを持っている。そして特筆すべきは、その瞳が燃えるように真っ赤なことだ。
全身を黒に身を包んだその姿は、この世のものではないとすぐに分かった。けれど不思議と恐怖感はない。
男は楽しそうに妖しい笑みを浮かべてリラを見下ろしている。暗闇の中、男の姿だけは、はっきりとリラの瞳に映った。
「あなたは……」
「ずっと姿を見ないと思ったら、そんなところにいたのか」
赤い瞳を細めて笑う姿にリラは目が離せない。男はリラとの距離をどんどん縮めてくる。
「なにを、言っているの?」
「一瞬だけ気を感じたから、こうして足を運んでやったんだ。……久しいな、シェーネムント」
その一言が合図のように、リラの中からなにかが溢れそうになる。リラは自身を抱きしめて、無意識にそれを必死に抑え込んだ。
しゃがみ込んで浅い息を繰り返し、俯きながら収まるのを静かに待つ。すると男の足元が目に入った。脳に直接響くような魅惑的な声だった。
「ほう。この私が名前を呼んでも出て来られないとは、よほど強力な力で縛られているらしい。その娘の中は心地がいいか?」
誰もいないと思っていたところから声が響き、リラは叫びそうになった。声は牢の外ではなく中だ。
恐る恐る辺りを見渡せば、ひとりの若い男が立っている。いつからそこにいたのか、リラはまったく気がつかなかった。
背が高く、肩まである黒い髪に透けるような白い肌。ヴィルヘルムとは、また違った妖艶な美しさを持っている。そして特筆すべきは、その瞳が燃えるように真っ赤なことだ。
全身を黒に身を包んだその姿は、この世のものではないとすぐに分かった。けれど不思議と恐怖感はない。
男は楽しそうに妖しい笑みを浮かべてリラを見下ろしている。暗闇の中、男の姿だけは、はっきりとリラの瞳に映った。
「あなたは……」
「ずっと姿を見ないと思ったら、そんなところにいたのか」
赤い瞳を細めて笑う姿にリラは目が離せない。男はリラとの距離をどんどん縮めてくる。
「なにを、言っているの?」
「一瞬だけ気を感じたから、こうして足を運んでやったんだ。……久しいな、シェーネムント」
その一言が合図のように、リラの中からなにかが溢れそうになる。リラは自身を抱きしめて、無意識にそれを必死に抑え込んだ。
しゃがみ込んで浅い息を繰り返し、俯きながら収まるのを静かに待つ。すると男の足元が目に入った。脳に直接響くような魅惑的な声だった。
「ほう。この私が名前を呼んでも出て来られないとは、よほど強力な力で縛られているらしい。その娘の中は心地がいいか?」