祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―
「クルト、リラをどこに連れて行った!?」
珍しく声を荒げるヴィルヘルムに対し、クルトは表情ひとつ変えない。いつもと立場が逆だった。リラのことはクルトが他の家臣たちにさっさと指示してしまい、面々は場所を移していた。
ここは方伯たちが集まり、重要な会議を行う部屋だ。高い天井、繊細に彫られた柱、壁には美しい絵画が飾られている。今は、誰もそんなことを気にはとめていない。
「地下牢に入れています。彼女は普通の人間じゃない。処分が決まるまではそこにいてもらいましょう」
「あんなところに!? 冗談じゃない! 今までリラが我々になにかをしてきたことはあるか?」
「今まではなくても、これからは分かりません。すべては我々を油断させるための演技だったのかもしれませんし」
「馬鹿な」
王は頭を振って、拒絶の意を示す。そんなわけない、そんなはずがないと思っているのに、ヴィルヘルム自身も突きつけられた事実に少なからずとも動揺していた。
エルマーが複雑そうな顔で二人を見つめながらも、激昂し続けるノルデン方伯の相手をするのに精一杯だった。
「リラをどうするって!?」
そのとき、不躾にドアを開けて入ってきたのはブルーノだった。その息は乱れ、作法もなにもない。なりふりかまわず駆けつけてきたのが伝わる。
「ブルーノさま!」
遅れてユアンが息を切らして入ってくる。初老の従者には、なかなか堪えたのだろう。肩で息を切らしながら頭を垂れた。ブルーノはそんなユアンにかまわず、ヴィルヘルムの方にリラのことを詰め寄る。
珍しく声を荒げるヴィルヘルムに対し、クルトは表情ひとつ変えない。いつもと立場が逆だった。リラのことはクルトが他の家臣たちにさっさと指示してしまい、面々は場所を移していた。
ここは方伯たちが集まり、重要な会議を行う部屋だ。高い天井、繊細に彫られた柱、壁には美しい絵画が飾られている。今は、誰もそんなことを気にはとめていない。
「地下牢に入れています。彼女は普通の人間じゃない。処分が決まるまではそこにいてもらいましょう」
「あんなところに!? 冗談じゃない! 今までリラが我々になにかをしてきたことはあるか?」
「今まではなくても、これからは分かりません。すべては我々を油断させるための演技だったのかもしれませんし」
「馬鹿な」
王は頭を振って、拒絶の意を示す。そんなわけない、そんなはずがないと思っているのに、ヴィルヘルム自身も突きつけられた事実に少なからずとも動揺していた。
エルマーが複雑そうな顔で二人を見つめながらも、激昂し続けるノルデン方伯の相手をするのに精一杯だった。
「リラをどうするって!?」
そのとき、不躾にドアを開けて入ってきたのはブルーノだった。その息は乱れ、作法もなにもない。なりふりかまわず駆けつけてきたのが伝わる。
「ブルーノさま!」
遅れてユアンが息を切らして入ってくる。初老の従者には、なかなか堪えたのだろう。肩で息を切らしながら頭を垂れた。ブルーノはそんなユアンにかまわず、ヴィルヘルムの方にリラのことを詰め寄る。