祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―
「拒むな。これは命令だ」

 そう言って腕を伸ばし、いつの間にか水が注がれていた杯をおもむろに煽る。ベッドの上でお世辞にも行儀がいいとは言えないのに、ベッドに横たわったまま、王の仕草一つひとつにリラは目が離せなかった。

 おかげで再び王が近づいてきたのに、命令されたとおり、拒むことができない。

 頤(おとがい)に手をかけられ上を向かされる。さっきは、あんなに乱暴に扱われたのに、次に重ねられた唇は、まるで壊れ物に触れるかのようだった。目で口を開けるように促され、ゆるゆると結んでいた唇を解く。

 零れないようにするためか、王はリラに覆い被さり抱きかかえるようにして密着させた。自分が今、どのような状況に置かれているのかなんて考えたくもない。

 だから、口内に満たされていく水分を必死に嚥下することに集中する。喉がごくりと音を立てて水分が体に染みていくのが分かった。

 すべて口移せたのか、王がリラから顔を離した。その瞳に映る自分を、じっと見つめると、再び口を塞がれる。

「んっ」

 もう終わったと思っていたのに続行される口づけにリラは頭が回らない。離れたくて手で押しのけようとしても、体力もなく細い腕では、密着した王はびくともしない。

 あっさりと逃げ惑う舌を絡め取られ、リラは初めての経験に震えた。心臓が激しく鼓動し、酸素を求めれば、誘っているかのようで、王はリラを深く求める。

 この行為の先になにが待っているのか。鈍くなる思考回路を懸命にリラは働かせた。
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