祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―
「分かった。しかし城の中とはいえ、護衛をつけないわけにはいかない。こちらの側近をつけさせてもらってもかまわないだろうか」

「陛下がかまわないのでしたら」

 オステン方伯は静かに息を吐く。結局、クルトとエルマーは同席することになり、他の面々には別室で待機してもらうことになった。同じように付き添うと申し出た従者や息子さえもだ。

 先ほどまで騒々しかった部屋に静けさが戻る。老人の荒い息遣いだけが響いていた。そして、やはり前触れもなくオステン方伯の話は始まった。

「ヴェステン方伯は、銀の髪を持つものを決して王に、王家に近づけてはならぬ。ノルデン方伯は紫の瞳を持つものを決して王に、王家に近づけてはならぬ。それはどちらも正しい。その通りだ。そして、我がオステン家に伝えられし話。いつかズーデン家の血を引く者が現れたときに伝えるように言われた真実の話です」

「真実?」

 ヴィルヘルムが訝しげに尋ね返した。オステン方伯は俯いていた顔を上げて、ヴィルヘルムの顔をまっすぐに見つめる。

「陛下、今から私が話すことは、あなたにとっていいものだとは限らない。なぜなら、どうあがいても運命は変えられない。辛くなるだけかもしれませぬ。それでも」

「かまわない、話してもらえないか」

 言葉を遮って強く先を促すヴィルヘルムに、オステン方伯は再び長い息を吐いた。これから話す内容の長さを表しているかのように。

「すべてはヨハネス王、いえ、そのご子息であるフェリックス王の頃に話は遡ります」
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