祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―
「殿下、彼女は魔女だ。瞳は恐ろしい色をしていた」
「見てください、この銀の髪! とてもじゃないが人間のものとは思えない。呪いを返された証拠です」
「待て、彼女は!」
騒ぎ始める面々をフェリックスは声を張り上げて抑え込もうとする。けれど、火が回るようにローザへの憎しみにも似た畏怖の感情は止まることをしらない。
「違う、違うんだ! 彼女は」
「どうされたんです、殿下? まさかこの魔女に誑(たぶら)かされたのですか?」
訝し気に問いかけられ、その不信感はフェリックスではなくローザに向けられることになった。
「魔女め! 王家に取り入ろうとは恐ろしい」
「やはり処刑すべきだ。生かしてはおけない」
「確実に首を刎ねなくては! なにをしでかすか」
「私達も呪われる! 悪魔に憑かれるわ!」
恐怖は伝染し、ヒステリックに叫び出す群衆。悪魔よりも恐ろしいものを、フェリックスは目の当たりにした。奥歯を強く噛みしめ、握り拳を作った。
「黙れ!」
腹の底から出した一言で内部は水をうったように静まり返る。フェリックスは精一杯、自分の父の姿を思い浮かべた。感情を他者に悟られるような真似は決してない、あの冷たい表情を。
「彼女を殺しはしない」
「なぜですか!? やはり殿下は彼女に……」
反論しようとする者を鋭く睨んで黙らせた。そして抑揚のない声で続ける。
「見てください、この銀の髪! とてもじゃないが人間のものとは思えない。呪いを返された証拠です」
「待て、彼女は!」
騒ぎ始める面々をフェリックスは声を張り上げて抑え込もうとする。けれど、火が回るようにローザへの憎しみにも似た畏怖の感情は止まることをしらない。
「違う、違うんだ! 彼女は」
「どうされたんです、殿下? まさかこの魔女に誑(たぶら)かされたのですか?」
訝し気に問いかけられ、その不信感はフェリックスではなくローザに向けられることになった。
「魔女め! 王家に取り入ろうとは恐ろしい」
「やはり処刑すべきだ。生かしてはおけない」
「確実に首を刎ねなくては! なにをしでかすか」
「私達も呪われる! 悪魔に憑かれるわ!」
恐怖は伝染し、ヒステリックに叫び出す群衆。悪魔よりも恐ろしいものを、フェリックスは目の当たりにした。奥歯を強く噛みしめ、握り拳を作った。
「黙れ!」
腹の底から出した一言で内部は水をうったように静まり返る。フェリックスは精一杯、自分の父の姿を思い浮かべた。感情を他者に悟られるような真似は決してない、あの冷たい表情を。
「彼女を殺しはしない」
「なぜですか!? やはり殿下は彼女に……」
反論しようとする者を鋭く睨んで黙らせた。そして抑揚のない声で続ける。