祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―
「全部、全部私が勝手にしたんです。だから、陛下はご自分のことを責めないでください。私に後ろめたさを感じたり、申し訳なく思うのとか、そんな必要ないんです、私はそんなこと望んでいません!」

 感情が奔る。これなら、あんな別れ方をした意味がない。自分のせいで、なんて責められるのを望んでいたわけじゃない。その後ろめたさで優しくされることも。

「だったら、お前はなにを望んでいるんだ?」

 低いよく通る声が静かに響き、感情的になっていたリラをぴたりと止めた。ヴィルヘルムはリラの頬を優しく撫でながら、ゆっくりと話しかける。

「私は、ずっとお前のことを探していた。ずっと会いたかった。真実を知ったからでも、呪いが解けたからでもない。その前からずっと、ずっとそばに置いておきたくて、手放したくなんてなかった。……お前は、リラはどうなんだ?」

 切なそうな声がリラの心を揺さぶる。ヴィルヘルムが自分に惹かれていたのは、ずっとお互いに憑いているものが呼び合っているのだと思っていた。

 それを錯覚しているのだと。でも、今でも気持ちを変わらずに抱いてくれているのなら。自分が抱いている気持ちは自分だけのものだ。

 瞳には映りはしない、それでもリラはヴィルヘルムの瞳をまっすぐに見つめ返した。

「私、ずっと自分が嫌いでした。見た目も、色々と見えてしまうのも、全部嫌でした。でもあなたは、そんな私を肯定してくれた。嬉しかった。気に入ってもらえて、役に立てると思わせてくれて。少しだけ、自分のことが好きになれた。すごく感謝しているんです、だから……」

 一息で言い切ってリラはそこで言葉を切った。この先を告げていいのかどうか少しだけ迷う。けれど、
< 231 / 239 >

この作品をシェア

pagetop