祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―
 もちろん断わる理由もない。しかしここまでタブー視されるということは、王家となにかあったのだろうか。そんな考えを巡らせることさえ許されない気がした。

 所詮、自分には関係のない話だ。リラはもう一度だけ肖像画に目をやり、フィーネに促されるまま部屋を後にした。

 部屋から出ると空気が軽くなったように思えた。なにかから解放されたような気がして、ほっと息をつく。フィーネも何事もなかったかのように話を続けた。

 夕方になり、差し込む光が眩しい。リラは来たときと同じように廊下を伝って部屋を目指した。

「では、リラさま、なにかありましたらいつでもお申し付けくださいね」

 運動、と呼べるほどではないが、体力の落ちているリラにとっては、近くの広間を往復するだけでも、十分な重労働だった。

 フィーネに支えられ、ベッドに横になろうとする前にリラは付き合ってくれたフィーネに再度お礼を告げる。

 そして笑顔を見せてくれたところで、部屋を出て行こうとするフィーネを思い立ったようにリラが呼び止めた。フィーネは不思議そうにリラの方に顔を向ける。

「どうされましたか?」

「あの、その」

 リラの中でふたつの意見がせめぎ合う。しばらく悩んだあと、リラは躊躇いがちに口を開いた。
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