祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―
馬車は、ある屋敷の裏で停まった。造りや大きさからして、身分の高い人間の家だということが十分に察せられる。裏口から家の中に続こうとした際に、ヴィルヘルムが振り返り、リラを再度見た。そして、その足をリラに向ける。
まさか、また抱き抱えるつもりではないだろうか、と身構えたが、ゆっくりと近づいてきたヴィルヘルムはその首に掛けてあったストールを外すと、リラの頭を包むようにして掛けてやった。
「それで髪を隠せ。お前の髪はどうも目立つからな」
「なりません! それはあなたに必要なものです」
すぐさまクルトが噛みつくように叫んだが、王は煩わしそうな表情を浮かべる。
「あっても、なくても変わらないさ」
「そういう問題ではありません」
リラはどうすればいいのか、とっさに分からなかった。掛けられた布からは、ほのかにいい香りがする。しかしなんの香りかまでは分からない。苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて、クルトは懐から布を取り出した。それをリラに差し出す。
「これで髪を隠してください。いいですね?」
強く言われて、リラはぎこちなく首を縦に動かす。自分に掛かっているストールをヴィルヘルムに差し出すと、渋々と受け取ってくれたので、次にクルトからの布を受け取る。
リラは自分の髪を服の中に仕舞うと、正方形の無地の布を広げ、頭巾のようにして自分の髪を覆った。
べつに否定されたわけではない。自分の髪がどんなふうに他人の目に映るのかなんて、ここに来るまでの経緯を思い出しても十分に理解できる。
それでも、隠せ、とヴィルヘルムに指示されたことに、多少なりともリラはショックを受けた。なんとも勝手な話ではあると思うのだが。
まさか、また抱き抱えるつもりではないだろうか、と身構えたが、ゆっくりと近づいてきたヴィルヘルムはその首に掛けてあったストールを外すと、リラの頭を包むようにして掛けてやった。
「それで髪を隠せ。お前の髪はどうも目立つからな」
「なりません! それはあなたに必要なものです」
すぐさまクルトが噛みつくように叫んだが、王は煩わしそうな表情を浮かべる。
「あっても、なくても変わらないさ」
「そういう問題ではありません」
リラはどうすればいいのか、とっさに分からなかった。掛けられた布からは、ほのかにいい香りがする。しかしなんの香りかまでは分からない。苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて、クルトは懐から布を取り出した。それをリラに差し出す。
「これで髪を隠してください。いいですね?」
強く言われて、リラはぎこちなく首を縦に動かす。自分に掛かっているストールをヴィルヘルムに差し出すと、渋々と受け取ってくれたので、次にクルトからの布を受け取る。
リラは自分の髪を服の中に仕舞うと、正方形の無地の布を広げ、頭巾のようにして自分の髪を覆った。
べつに否定されたわけではない。自分の髪がどんなふうに他人の目に映るのかなんて、ここに来るまでの経緯を思い出しても十分に理解できる。
それでも、隠せ、とヴィルヘルムに指示されたことに、多少なりともリラはショックを受けた。なんとも勝手な話ではあると思うのだが。