祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―
「どうせお前のことだ。フィーネから聞いた歩く死者をどうにかしようと考えているのだろう」

 思考が沈みそうなところで、ヴィルヘルムに見透かされていたことにぎくりとする。

「あ、はい。私にできることがあるのかは分かりませんが……」

「私にとっては、どうでもいい存在だ。ただ、どうにかなるなら、それに越したことはない」

 その発言を、リラが歩く死者について行動することを許可したと捉え、さらに尋ねる。

「明日、実際にそのバルコニーを見に行ってもかまいませんか?」

「好きにすればいい。ただし、ひとりで出歩くな。フィーネを連れて行け。本人にも言っておく」

「はい。……あっ」

 そこでリラはフィーネが怖がりだったことを思い出した。自分の勝手な都合で彼女を歩く死者の出るところへ連れて行くのも申し訳ない。

 場所さえ分かれば、向かうのはひとりでも平気だ。そのことを告げると、王は途端に渋い顔になった。

「言うことが聞けないなら許可しない」

 強い口調で言い放つヴィルヘルムにリラは言葉を迷う。たしかに、自分のような人間をひとりで行動させるには、信用が足らないのだろう。

「あの、陛下」

「お前は誰のものだ?」

 言葉を遮るようにヴィルヘルムはリラに問うた。その凛とした声に、表情に思わず息を呑む。そしてヴィルヘルムはベッドに広がっているリラの髪を掬い上げた。その動作ひとつひとつに目を奪われる。
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